●千島学説こそ正真正銘の医学
繰り返しますが、人体は「食の化身」であるといわれます。その人が何を食べているかで、その人の肉体を作り上げ、その内面的な人格や、そして頑健といわれる心身を構築しています。 そして健康とは、食生活次第で良くもなったり、悪くもなったりします。 人体の基本構造が、「食→血→躰」という流れと、変化過程において、分化・発展しているということが明らかになります。 赤血球はまず、腸で作られ、その赤血球がやがて体細胞に分化していくという、一つの大きな流れが人間の人体を形成しているからです。 これを具体的に言いますと、食物は消化されることによって、その栄養素は腸壁部の腸絨毛から吸収され、これが赤血球母細胞に造り変えられます。赤血球母細胞はその内部から放出された赤血球が、血管内に送り込まれて全身を巡り、躰の総ての細胞へと変化し、発展していきます。 これが千島学説の基本的な『腸造血説』の根拠であり、血球から体細胞への変化・発展は、辿り着いた先の各部分での「順応」という作用によって分化を遂げます。 これは、組織細胞に辿り着いた赤血球や白血球が、その周辺の体細胞から強力な影響力や誘導によって、その場の影響を受けるからです。 例えば、辿り着いた先が肝臓なら肝細胞と変化し、またその部分が脳ならば脳細胞へと順応し、分化して、変化・発展を遂げます。 このようにして自分の役目を了(お)えた赤血球や白血球は、損傷したり破壊された体細胞の穴埋めとして壊れた組織の修復に寄与します。 以上のように血球から次々に新しい体細胞が作り出されるのであって、現代医学や現代生物学が、高校の「理科1」や「生物」の教科書で教えているように、細胞分裂によって体細胞が造られるというようなことは、実際には起こっていないのです。 つまり体細胞に限っては分裂増殖をしないのです。赤血球の体細胞化なのです。 千島学説の中心課題は、食べ物が体内に取り込まれた場合、それは躰の中心部である腸内に入るという基本原則の上に立ち、その後に、それは腸壁絨毛の触手によって血管に取り込まれ、血管内を駆け巡る赤血球に変えられるという学説から成り立っています。 したがって造血の主体である腸は、食べ物を血球に造り変える働きをしていることになります。そして躰の本体である内臓、筋肉、骨、皮膚などの、総ての組織器官を構成する体細胞への分化・発展を遂げるというメカニズムを現わします。 こうして千島学説に則って、人体の生体メカニズムを解明すると、「食の世界」が「血の世界」を造り出し、それが分化・発展を遂げて、「体細胞の世界」を構成するという移行が明白になります。 人体における生体は、その中心部から発する躍動的な、然も、遠心性を持った「分化・発展構造」を持っていることになります。 食が血になり、それが躰に変わる。その躰の根源は食であるから、躰は「食の化身」であることが分かる。その躰を造る最初のかかわりを持つ処は「腸」であり、腸が血液を造る。この一連の流れが千島学説の主なる真髄です。

●赤血球造血
さて、人体は「食の化身」であるといわれるといわれる所以は、これまで繰り返し述べてきました。 これを腸造血説の観点から更に詳しく述べると、赤血球造血は、系統的にも発生的にも腸内の繊毛の部分でなされるとし、進化論では下等動物は腔腸や消化器で造血がなされ、個体発生的な人間の場合でも第一段階では卵黄嚢の繊毛で行われ、これを「卵黄嚢造血」といいいます。 そして第二段階に入ると、卵黄の少ない哺乳動物や人間では子宮内面の子宮壁にある血管の開放端から出血し、その血球モネラから胎盤絨毛ができ、絨毛壁細胞から血球ができる。妊娠中の胎児は胎盤の絨毛で母体からの赤血球を吸収し、それによって黄嚢絨毛や胎盤絨毛の壁細胞を新生します。 その結果、絨毛壁細胞が形成され、その成熟によって内部の無核の赤血球十数個と胞子形成する過程で新生し、それが連続して血管となり臍帯の静脈から胎児の体内に運ばれ胎児を形成する細胞の母体となっていきます。これが「胎盤造血」のメカニズムです。これが第三段階の過程に当たります。 そして出産後は母親からの血液補給が断たれるので、新生児は母乳によってその消化産物から腸粘膜の絨毛を形成し、以降絨毛で造血を行っていくことになります。これが「腸造血」のメカニズムです。 以上を要約すれば、第一段階は卵黄嚢の絨毛で、第二段階は胎盤の絨毛で、そして第三段階は腸管内の絨毛で造血されるということであり、これを植物の当てはめて考えれば、人体における腸の絨毛は、食物における根毛に相当し、動物は腸壁内の絨毛で、植物は根を伝播して、体内に栄養素を吸収するメカニズムになっています。 つまり人体は「食の化身」であるという、東洋医学の説がここで再浮上するのです。こうした事実が医学者の間で冷笑され、間違った仮説として考えられていることは大変に残念なことです。
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