●『腸造血説』千島学説
現代は不況にありながらも、巷にはあらゆる食材が溢れ、依然と飽食の時代であり、今日の日本の食文化はある意味で慎みを忘れた、乱れたものになっています。一様に猫も杓子もグルメを気取ります。しかしこれは、同時にこれから先の日本人の食体系の破壊でもあります。
そして食生活その物を考えた場合、実は日本が高度成長期に差し掛かる以前の、いわゆる「貧しいかった時代」という時期の、日本人の食生活の方が正しかったのではないかという疑問を残します。
多くの日本人は、当時、木綿の粗衣や、木綿の代用品としてスフ(ステープル・ファイバーの略称。特に、ビスコース‐レーヨンの人造短繊維。昭和10年代に木綿の代用品として広く使用。人造綿花。光綿)を纏い、粗食・少食に耐えていた時代です。こうした食風習は、日本が高度成長期に突入する昭和40年代前半まで続きました。
しかし今日、現代人は「文明」という脂肪膨れの贅肉を躰に纏(まと)った為に、食生活は乱れ、慎みを忘れて、まさしく「文迷」の時代に突入したといえましょう。
生活空間や周囲の住環境は、便利さと最適さと豊かさの中で、文明という恩恵に預かりながら、一方でこれと引き替えに、自然破壊や海洋汚染を企て、とりわけこうした文明の恩恵は、それと引き替えに、現代人に二酸化炭素問題で深刻な影を落し始めました。そして更には、「文明の恩恵」イコール「軟弱な体躯」という図式ができ上がったのです。
さて、人体は「食の化身」であるといわれます。
その人が何を食べているかで、その人の肉体を作り上げ、その内面的な人格や、そして頑健といわれる心身を構築しています。
そしてこれを更に証明するものが、一部の医学者の間で唱えられている『腸造血説』です。
この『腸造血説』は、現代医学の定説となっている『骨髄造血説』(現代医学では骨中の腔所をみたす柔軟組織を骨髄とし、赤色髄は造血組織で、赤血球・白血球・血小板などがここで形成され、黄色髄は脂肪組織から成る)を根底から覆すもので、「血球は腸で造られる」とし、食物が消化器で血液となるとした学説です。この学説を唱えたのは、千島喜久男医学博士で、これを「千島学説」といいます。
この千島学説によると、現代医学の定説である、生体を構成している細胞は、細胞自身が分裂して増殖するという説に対して、細胞は細胞自身で分裂増殖されるのではなく、赤血球から新生して細胞ができるという学説を掲げ、赤血球は消化器である腸で造られるという『腸造血説』を掲げている事です。これは東洋医学観の、「食べたものは血となり肉となる」という古代人の医学観を彷彿(ほうふつ)とさせます。
しかし今日では定説の、血液は骨髄で造血されるという考え方が主流で、現代栄養学もこの説を強く支持しています。
ところが今日、『腸造血説』は異端視され、現代医学では定説の『骨髄造血説』が広く支持されており、しかし残念なことに、この現代医学の学説が主流となっている為に、本来変わるべき医学上の問題や、課題も無視されたままで、従来通りの誤った治療法がなされているのが実情です。
『骨髄造血説』を最初に唱えたのは、1868年、ノイマンとビッズオセロという二人のユダヤ系(アシュケナジー・ユダヤ)の医学者で、彼等は、鶏や鳩などで実験を繰り返しその研究結果から、血球を生成する器官は骨髄や脾臓やリンパ節などであり、ここで造血がなされ、特に骨髄は造血作用の大半を占めるという骨髄造血説を打ち出し、これが現代医学の考え方に広き根付き、定着しました。
しかし近年になって、この従来の医学上の定説に疑問を持ったのが千島喜久男(医学博士)と言う医学者でした。
彼の研究によると、「健康な生体(成体)では骨髄は脂肪で充満していて、造血像などは確認できなかった」としているのです。
そして彼は「註釈」をつけ、「但し、大量失血の後や、絶食を行うと骨髄中に赤血球(erythrocyte/血球の一。単細胞で、ラクダ以外の高等哺乳動物では成熟途中で核を失う。ヘモグロビンを含むため赤色を呈する。人の赤血球は骨髄で産生され、両凹面の円盤状)が多く見られた。それをもって、骨髄で血液が造血されると断定するのはおかしい」と述べ、「健康で栄養状態の良い一般人に、病的な状態の現象を適用するのは、常識的に考えてもおかしい」としたわけです。
ユダヤ系の二人の医学者達の掲げた『骨髄造血説』は、生体が病的な時に、あるいは減食状態の時か、絶食状態の時に適用して、細胞から赤血球に逆分化にている現象を見ているのであって、逆方向の現象を実験結果からまとめ挙げたものに過ぎなかったのでした。
しかし現代医学は、この全く逆方向現象を定説と決め付け、これを現代医学の基盤にしているのです。
この事は、現代医学が根本的に間違った方向に進んでいるという現実を物語ったものではないか、という疑いが残ります。
もし骨髄造血説という学説が、コペルニクス時代の「天動説」としたら、現代医学は現代栄養学同様、間違った方法で医療が患者に施され、現代医療制度事態が根底から崩れてしまうことになります。
その良い例が、企業の健康診断で行われている「ガン検診」です。
ガン検診において、早期発見、早期治療が叫ばれます。X線などを当てて、初期状態のガン細胞を探します。
しかしこの被爆の際に、微小であったガン細胞が、巨大化することがあります。
また、こうした被爆によるガン検診の危険を心ある医師が訴えても、直ぐに黙殺されてしまいます。過去に何人もの勇気ある医師が、こうした事をテレビ局に訴えたところ、某TV局は「被爆とガン細胞の巨大化」という因果関係を公表するために特集番組を作りましたが、直ぐに圧力が掛かり、引き摺り降ろされてしまいました。
これはレントゲン技師や医療機械技術者らの失業につながりますから、危険な被爆を体験させながら、愚かなガン検診を、一向に中止できない現状があります。それどころか、こうした医療産業は、マスコミを通じて早期発見、早期治療を大々的に宣伝しています。
そしてこの現代医学と、がっちりと組み合わされたものが「現代栄養学」であり、両者は合体することで食文化を狂わせ、また、国連食糧農業機関(Food and Agriculture Organization of the U.N./国連の専門機関の一つで、世界の食糧および農業問題の恒久的解決を図ることを目的とする国際機関)も一緒になって、誤った方向に世界人類を導こうとしているということになります。
この大きな誤りは、その第一が、骨髄中で血芽球(赤血球の母体)は当然の事ながら細胞分裂することはありません。
その第二に、骨髄造血説では、細胞は分裂によって増殖するという定義を打ち出しているのですから、母体である発芽球が分裂して、赤血球にならなければならないのですが、その分裂現象は一切見られませんでした。
そして第三は、無脊椎動物には脊髄が存在せず、特に下等動物は腔腸や消化器で造血が行われています。その上、組織や器官が単純であり、進化論的に言っても、骨髄造血説は成り立たず、また、生物現象に飛躍はありえないとするのが進化論であり、生物現象が発生した歴史や系統から探究しても、造血は腸造血説でなければなりません。
しかし現代医学は、下等動物のそれは哺乳動物や、人間に対しては腸造血の理論が当てはまらず、高等動物については腸造血説ではなく脊髄造血説が正しいとされて、未だに腸造血が医学者の間で冷笑されたままになっているのは何とも悲しいことです。
果たして「高等動物における脊髄造血説は正しいのだろうか?」という疑問が繰り返し起こってきます。
現代医学は、この説が正しいとして現代の医療が続けられており、これが時代を経て、コペルニクス同様天動説が間違いであると証明された時、現代医療の在り方は根底から覆えることになります。
即ち、誤った考え方で現代医療が行われいるということになり、同時にこれを背景にした現代栄養学も同罪の罪を免れる事はできません。