魚も危ない!

日本人の魚好きが毒物の大量摂取をもたらす。
日本人は特別。全体の60%を魚介類から摂取している。
現在、ダイオキシンのほとんどはゴミなどの焼却過程で発生すると考えられている。大気汚染をもたらしたダイオキシンは、地上に降下したあと、雨によって川に流れ込み、海へたどりつく。
そこで微生物の体に入り、それを食べた小魚、さらにそれを食べる小型魚、さらにそれを食べる大型魚に濃縮して蓄積される。そしてそれらの魚を食べる人間のからだにも蓄積されてゆくのである。
人体に入るダイオキシン類の97%が食べ物からの摂取であると言われているが、欧米人が肉や乳製品から主に摂取しているのに比べて、日本人はそのうちの6割を魚から摂取している。
日本人にとって魚は重要な食料源であるだけに、深刻な問題といえる。

ダイオキシンとは?
ダイオキシンは「地上最強の猛毒」として知られ、
青酸カリ、サリン、フグ毒などを上回ります。

無色無臭の固体で、ほとんど水には溶けませんが、脂肪などには溶けやすいという性質を持っています。

ダイオキシン摂取により、がん、奇形児、甲状腺機能の低下、生殖器官が小さくなる、精子数が減る、免疫機能の低下など。

どうやって発生するの?
廃棄物の焼却炉など、物を燃やすところから主に発生し、大気中に出ていきます。大気中の粒子などにくっついたダイオキシンは、土壌に落ちてきたり、川に落ちてきたりして土壌や水を汚染します。さらにプランクトンや魚に食物連鎖も通して取り込まれていくことで、生物にも蓄積されていきます。

ダイオキシンの体内への侵入経路
・食物からの取り込み
・呼吸により空気から取り込む
・土が手についたりして取り込まれる
・飲み水から など。


日本の基準は甘すぎる

日本の厚生省は1996年6月に、一日に体重1kgあたり10pg(ピコグラム)までなら体に取り入れても安全と制定した。これはすなわち、体重50kgの人で一日500pgまでなら安全という計算である。

国によって違う、あいまいかついいかげんな数値基準
しかし、これが世界的基準であるかといえば、イタリアやオランダなどでは1日1pgが限度とされているし、ドイツなどでは10pg、目標値は1pgとなっている。
アメリカは環境保護庁が0.01pg、カリフォルニア州が0.007pgとまちまちだが、それぞれ非常に低い数値となっている。

WHOは98年5月に、ダイオキシンの環境ホルモンとしての観点も加えて危険度を見直し、それまで体重1キログラムあたり10ピコグラムだった耐容一日摂取量を1〜4pgと設定した。

日本もこの動きを受けて、99年6月に、前述の厚生省の定めた1日10pgと環境庁が定めていた1日5pgという別々だった耐容摂取量を1日4pgに統一した。
ただしこの数字は単にWHOの数字に合わせただけで、明確な基準があるわけではないといわれている。


ニュースステーションの所沢ダイオキシン騒動
99年2月、テレビ朝日系のニュース番組、「ニュースステーション」において、所沢産の野菜がダイオキシンに汚染されていると報道された。
その報道を機会に、埼玉産の野菜、特にほうれん草の価格が大暴落を起こし、仕入れをストップしたスーパーなどが続出した。
しかし、この報道は正確ではなかった。
番組の調査のもとに公表されたデータに誤りがあり、番組はすぐに謝罪したが、地元農民の怒りは収まらず、所沢産の野菜もイメージダウンは免れなかった。
この事件はテレビ局の報道姿勢が厳しく問われることになった一件だったが、同時に産業廃棄物の規制問題、摂取量の基準値の未定、行政や地元JAの対応、調査データの公表方法などさまざまな問題を投げかけた。
特に基準値の問題では、人が摂取しても問題がないといわれる耐容一日摂取量が日本では世界各国に比べてきわめて甘く、またその基準は単にWHOに合わせただけのものである。
このニュースステーションの一件は、ダイオキシンに対する人々の不安が、いかに大きいものであるかを示した。そしてその報道は、ひとつ間違えると大パニックを引き起こす可能性があることを証明したのである。



ダイオキシンに対する政府の認識の甘さ
行政サイドがなかなか正確な数値を発表しないなど、日本のダイオキシンへの対策の不備さも所沢の事件(上記ニュースステーションの誤報道の件)では明らかになった。
さらには、この問題の対策はいったいどの省庁がとるのかを考えてみても、これまで大気、水質などの調査は環境庁、ゴミ処理所の規制は厚生省、製紙、パルプ業などの産業界の指導は通産省、農作物の調査は農水省と、調査も施策もバラバラの状態である。
所沢のような事件を2度と起こさないためにも、国がらみで真剣にダイオキシン問題に取り組むべき時期に来ているといえるだろう。

魚介類を汚染しているのはダイオキシンだけではない。
PCBや、有機スズ、ノニルフェノールなど様々な有害化学物質が各地の魚介類から検出されている。
アメリカとカナダの間にある五大湖ではかつて、工業排水や産業廃棄物による汚染が広がった。その五大湖のPCB汚染を受けた魚を食べていた母親が、産んだ子供の知能に問題があることが、調査の結果わかったのだ。
臍の緒(へそのお)にPCBが多く含まれていた親の子供ほど知能が低くなっていたのである。そしてその影響は生まれたときだけにとどまらず、子供が11歳になった時点での知能指数も、他の子供に比べて劣っていることもその後の調査で判明したのである。

また、ダイオキシンは母親の母乳にも影響が出やすいことがわかっている。
自分で選択できない子供を守るには大人が意識してそれらに対処するしかないのである。


参考文献 地球がなくなる100の理由
監修 餌取章男(財)科学技術振興団理事

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